2025年6月23日月曜日

 日本に「財政のワニ」などいなかった。

 


謎の4つのルール

2:12 

森永さんがおっしゃってくださった「国債の60年償還ルール」と、60年で国債を現金償還するというルールを設けているのは日本だけです。他の国では、国債というのは一度発行すると民間の資産となるものですから、償還期限が来ても永遠に事実上借り換えをしていくというのが普通の考え方で、こうした現金償還の決まったルールというのは存在しません。

さらに日本では、財政が黒字になった時はその半分は現金償還に回しなさいというルールがありますが、他国にはそういうルールもなく、黒字になったら返したければ返してくださいと。景気の加熱を抑制する時にしか現金償還はしないということになります。これが一つ目の謎ルールです。このズレがあるために、ワニの口の上顎が歳出でぐっと開いて、償還に返っているからぐっと開いてワニの口になってしまう。この国債の60年償還ルールをなくしてしまえば、ワニというのはいなくなる。基本的にサイトを見た時に、日本の場合は国債関連の費用として債務償還費と利払い費がありますが、例えばG7の他の国で言うとこの債務償還費はなくて利払い費だけが計上されているということですよね。はい、そういうことですね。結果として日本は両方乗っけてますから、上顎を思いっきり引っ張っていくという形になります。これが一つ目の謎ルールです。
グローバルスタンダードでは借り換えなのにやっていないから上顎開く。



二つ目の謎ルールが、単年度の税収中立の原則ということです。これは単年度で見て、どこかを減税するのであれば必ずどこか増税をして、税収を単年度で中立にしてくださいという原則を持って財政運営をしているということになります。これがなかなか減税が景気対策や経済構造を変えるために使えない一つの理由です。当然、増税は嫌がられますから、減税のためにどこか増税をしなければいけないとな
ると、当然減税もしにくくなるということです。

他国、グローバルなルールでは長期的に税収中立ということはあります。今年減税で景気を良くして、たまたま税収が下がったとしても、そのうち景気が良くなっていくので、10年で見れば税収は中立ですと。ですから目先はしっかり減税をやって景気を刺激していきましょうということができるのですが、日本は単年度で税収中立ですから、税が景気を刺激できる効果というのは、税の構造を変えるとその構造が歪んでいて、それを直す効果ぐらいしかなく、減税が正味で景気を刺激するということがなかなかできないというのが日本の謎ルール。これが二つ目ですね。

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三つ目が「生のプライマリーバランスの黒字化目標」です。生というのは景気を考慮しない生のプライマリーバランスを区切って、2年、3年、今は25年度と言っていますが、年度を区切って黒字化をするという目標を持っているのは日本だけです。グローバルにはプライマリーバランスの黒字化目標があったとしても、景気を考慮した構造的なプライマリーバランスの黒字化を目指すというのが普通です。

これはどういうことかと言いますと、景気が悪い時にはプライマリーバランスが赤字なのは当たり前で仕方がない。しかし景気がとても良い時にもプライマリーバランスが赤字なのであれば、これは構造的に財政がやはり赤字体質になっているので、これはちゃんと増税をするなり歳出を削減して、ちゃんと収支をゼロにしなければいけませんねという考え方です。なので、日本だけが景気を考慮せず、景気が悪くてもとにかく25年度までに黒字化を目指すというのは日本だけの謎のルールだと思います。・・・・・
単年度近視眼的に財政均衡がああああ、とさわぐ


そして四つ目、「裁量的歳出までPay as you goの原則」です。これはよく言われるのは、恒常的な支出のためには恒常的な歳入が必要ですと、なるほど、当たり前のように聞こえますが、こういう原則で財政運営しているのは実は日本だけです。社会保障などの義務的経費はこのPay as you goと、支出が増えるのであれば歳入を増やしましょうという原則でやっている国が多いのですが、予算でフレキシブルに対応できる。例えば教育や防衛、公共投資、こういう裁量的歳出までPay as you goの原則を適用しているのは日本だけです。

他国は裁量的歳出は必要であれば歳出をする。そしてその時に税収が上がっていれば税収が使われるかもしれませんし、それがなければ普通に国債を発行して歳出になっているのが普通の話です。

そしてなぜこれだけ裁量的歳出にまでPay as you go、すべての歳出にPay as you goの原則を適用してしまったのか、どこからそういうのが始まったのか調べてみると、民主党政権の野田政権の時に始まったということが分かりました。野田政権の時に骨太の方針で「追加歳出には追加歳入が必要だ」と、すべての歳出に対してPay as you goを適用しますという骨太の方針から、なぜかずっとその原則が続いてきて、自民党政権になってもそれは変わらず、さも当たり前のようにずっと続いてしまっているというところがやはり大きな問題があるんじゃないかと思います。

財源がとうるさくいわなくていいものまで「財源があああ!」とさわぐ
16:45
下顎のトリックについても、ぜひワニの口の図をご覧いただくと、33ページ目の左側が典型的な開いたワニの口です。上顎は一般会計の歳出で、この中に債務償還費が入っているので、無理やり上顎を上に出している、なるほど。そして下顎が一般会計の税収の推移なんですが、当然、国の歳入というのは税収だけではなくて、税外収入もあるし、特別会計の余剰もあるということで、下の下顎というのはできるだけ上にいかないように、できるだけ下に抑えようとしているだけなんです。

つまり、このワニの口というのは、思いっきり上顎を上に、思いっきり下顎を下に押さえて、無理やり開かせたワニの虐待のようなワニの口だということですね。飼育員のくせにワニを虐待している、そういうことですね。

ちなみに、その上の顎は債務償還費が入っているからという話でしたけど、下の顎を税収だけにしているじゃないですか。これ、グローバルの基準で言うと、いわゆる社会収入も入ってくるということですね。また、特別会計の余剰を乗っけてみますと、右側の図が、上顎から債務償還費を引いて、下顎に税外収入などを加えたものですけれども、基本的にはほぼ一定なので、Yの字のようにどんどん開いて日本の財政がどんどん悪化して、タイタニックのように氷山にぶつかって破綻していきます、という姿では全くないということです。

そして、これちょっと面白いのは、ワニの喉元を見ていただくと、喉元のところはバブルなんですね。左側をご覧いただくと、バブルの時も歳出が税収を上回っていて、バブルの時も財政というのがしっかり均衡していなかった、という主張に使われやすいんですけれども、右の方をご覧いただくと、喉元バブルのところ、90年前後ですね、ちゃんと黒い線が上に出ているわけです。

税以外にも収入あるのに載せないで下顎開く。

財務省はワニの虐待だな。 

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